将来の人口予測と賃貸住宅着工件数のアンバランスな現状
国立社会保障・人口問題研究所は、全国人口推計(日本の将来推計人口)を行い、 平成29(2017)年4月10日にその結果を公表しました。
皆さんがご存知の通り、人口減少と高齢化がはっきりと予測されています。
総人口は、2015年国勢調査による1億2709万人から、50年後の2065年には8,808万人と推計されています。
老年人口割合(65歳以上の人口に占める割合、いわゆる高齢化率)は、同じく2015年の26.6%から、50年後の2065年には38.4%へと上昇する予測です。
総人口は今後50年間で31%減少!(図は国立社会保障・人口問題研究所作成)
老年人口割合は今後50年間で11.8%上昇!(図は国立社会保障・人口問題研究所作成)
高齢化率も気になりますが、総人口が50年後に31%も減少することのほうが更に問題ではないでしょうか。
今回は、直近の賃貸住宅着工件数と絡めて考えてみます。
国土交通省が発表した平成29年3月の「住宅着工の動向について」によりますと、賃貸住宅の着工件数は、前年同月比で11%増加しています。
ちなみに、持家の着工件数は、前年同月比で2.4%減少しています。
将来の人口が減少することが明らかな場合、賃貸住宅の着工件数は減少、もしくは横ばいとなるはずですが、実際には増加しています。
将来の人口減少と賃貸住宅着工件数の増加というアンバランスな状況が生まれています。
これから、相続対策等で土地の有効活用を図られる場合、利回りの良いワンルームマンション以外の選択肢も検討しなければならないと思います。
相続対策も土地の有効活用も本来の目的は、家族の安定した将来設計を実現することですので、目先の利回りを優先せず、将来にわたって安定した収入の確保を優先される方が賢明でしょう。
土地の立地にもよりますが、建築費の補助金が受けられる可能もある「サービス付き高齢者向け住宅」(いわゆるサ高住)や、借地期間満了により土地が必ず返還される定期借地(住宅用なら50年以上、事業用なら10年〜50年未満)なども検討されることをお勧めします。
土地の有効活用をお考えの方は、何なりとお気軽にご相談ください。
100%依頼者の立場に立って、最適な有効活用方法をご提案させて頂きます。
5月29日から各種相続手続に利用できる「法定相続情報証明制度」がスタートしました
5月29日から、全国の法務局(主に不動産登記を取り扱う役所)で各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」の運用が開始されました。
どういう制度かと言いますと、相続人が法務局に、被相続人(亡くなられた方)の生まれてから亡くなられるまでの戸籍関係の書類と、法定相続情報一覧図(被相続人の氏名・最後の住所、相続人の氏名・住所・続柄等の情報を記載したもの)を提出します。
法務局の登記官が上記の書類の内容を確認の上、証文文付の「法定相続情報一覧図の写し」(被相続人の戸除籍謄本等の書類に代わる証明書)を交付するというものです。
この制度以前は、相続手続において、被相続人の戸除籍謄本等の束を相続手続を取り扱う各種窓口に何度も出し直す必要がありました。
今後は、一度法務局で必要な書類を提出すると、5年間は「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受けることができますので、戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなるのです。
なんと!「法定相続情報一覧図の写し」の交付は無料ですので、一度に複数の写しを請求して、複数の金融機関に対し同時に預金払い戻し手続きをすることもできます。
また、不動産の相続登記にも利用することができます。
戸籍の束を何度も相続手続きの関係窓口に提出しなくても良くなりますので、相続人はもちろんのこと、手続きする金融機関等の担当者の負担も軽減されます。
これから相続手続きを行われる方は、負担軽減になりますので、ぜひご利用頂きたい制度です。
余談ですが、なぜ今のところメリットしか見当たらないこの「法定相続情報証明制度」の運用を法務局が行うのか?についてです。
不動産を所有されていた方が亡くなられると相続人間で遺産分割協議の上、法務局で不動産の相続登記を行わなければなりません。
しかし、相続人間で遺産分割協議がまとまらず相続登記ができない場合や、遺産分割ではもめ事は無いが面倒という理由等で、相続登記をせずに放置しているケースも多いようです。
土地や建物の相続登記を放置した結果、所有者不明の空き家や空き地が増えてきており、荒廃して危険な空き家問題等の様々な社会問題の要因となっている可能性があります。
そのような社会問題を解消する為に、「法定相続情報証明制度」の運用を通じて、不動産の「相続登記の未了件数」を減らして行きたい。ということがこの制度を始めた理由のようですね。
農地の価格の目安とは
都市部(市街化区域内)の土地の価格については、様々な指標が公表されており、インターネットで検索すればおよその相場が分かります。
主な指標となるものは、国土交通省が発表している公示地価(1月1日時点のもの)、都道府県が発表している基準地価(7月1日時点のもの)、国税庁発表の相続税の計算に利用される路線価、市区町村が定める固定資産税評価額などがあります。
この中で実勢価格により近いものは公示地価と基準地価ですね。
では、農地の相場はいくら位なんでしょうか。
(一社)全国農業会議所の調査によりますと、市街化調整区域の農地の平均価格は以下の通りとなっています。
この調査は昭和36年から毎年実施されており、今回で61回目ですが、都市部に比較的近い市街化調整区域の農地価格(全国平均)は、平成4年をピークに24年連続下落しているそうです。
京都府、滋賀県、大阪府で比べると大阪府の農地価格が高いですが、昨年比の下落率も一番大きいですね。
【田の平均価格】※坪単価とは1坪(約3.3㎡)あたりの価格です。
京都府 坪単価12,823円(前年比△2.4%)
滋賀県 坪単価 3,804円(前年比△1.8%)
大阪府 坪単価26,585円(前年比△8.4%)
【畑の平均価格】
京都府 坪単価11,279円(前年比△1.9%)
滋賀県 坪単価 4,122円(前年比0.3%)
大阪府 坪単価26,869円(前年比△10.6%)
都道府県別の平均価格の統計資料ですので、都市部(市街化区域)に近いほど農地の価格はより高くなる傾向があります。
将来、市街化調整区域の農地を売買される予定がおありの方は、ある程度の目安としてご参考になるのではないでしょうか。
認知症リスクに備える相続対策 家族信託の活用について
高齢化社会を迎えて認知症になるリスクも増してきています。
一旦認知症になってしまうと、その後の相続対策が一切できなくなってしまいます。
いつなるか分からない認知症リスクに備える方法はいくつかありますが、今回は家族信託の活用について見て行きましょう。
認知症になってしまう前に成年後見制度を利用していても限界があり、万全の相続対策ができないこともあります。
まず、信託とは、財産の所有者である「委託者」=(託す人)が、「受託者」=(託される人)に財産を託し、「受益者」=(利益を得る人)がその財産や利益を得られる仕組みで、「受託者」=(託される人)が財産の管理や処分などをする制度です。
平成19年に新しい信託法が施行されるまでは、信託業の免許を持つ信託銀行等が行う商事信託がほどんどで、その場合には受託者は信託銀行等でした。
新しい信託法では、営利を目的とせず特定の人から単発的に信託を受託する民事信託(いわゆる家族信託)が積極的に活用できるようになったため、相続や事業承継対策のツールとして注目されるようになりました。
資産を所有する本人が「委託者」、信頼できる家族等が「受託者」、主に本人が「受益者」となる場合が多いですが、その他にもいろんなケースに活用が可能です。
但し、「委託者」=(託す人)である本人の意思能力があるうちにこの制度を始める必要があります。
例えば、賃貸マンションを所有する父が委託者、長男が受託者、受益者を父とします。賃貸マンションの管理や運用及び処分権限は長男に移り、家賃等の収入を得るのは受益者の父です。信託契約締結後に父が認知症になった場合でも、長男の判断で賃貸マンションの修繕・管理や相続対策等が可能です。委託者である父の相続が発生した場合は、賃貸マンションの名義を受託者の長男とすること等も信託契約に盛り込めますので、遺言書の機能も併せ持ちます。この例に限らず、受託者や受益者を孫にするなど自由に決めておけます。
【家族信託活用の注意点】
【家族信託活用のメリット】
信託の仕組みは難しい面が多いため、家族だけで家族信託を行う場合でも、信託の実務に強い弁護士・司法書士等の専門家に必ず相談してください。
そのような弁護士・司法書士がお知り合いにおられない場合は、信託実務に強い専門家をご紹介させて頂きますのでお気軽にご相談ください。
家族信託には、成年後見制度や遺言にはないメリットもたくさんあります。高齢や判断能力低下が心配される方は、認知症リスクに備える相続対策として、家族信託の活用を検討されることをお勧め致します。
生産緑地の面積要件緩和等に関する「都市緑地法等の一部を改正する法律案」が国会で可決、成立しました!
以前から、このブログで取り上げておりました生産緑地の面積要件緩和等に関する「都市緑地法等の一部を改正する法律案」が、4月28日に国会で可決され、成立しました。
この法律の成立により生産緑地法も改正され、生産緑地地区の全国一律500平方メートル以上という面積要件を自治体が条例で引き下げることが可能になります。
今後、各自治体が条例で生産緑地の面積要件を決定しますので、その内容も注視して行きたいですね。
私が農地相続コンサルティングを行っております京都・滋賀・大阪につきましては、各自治体の条例内容が決定次第、改めてこのブログでご報告させて頂きます。
これまで市街化区域内の都市部近郊500㎡未満の農地は、生産緑地の指定を受けることが出来ず、納税猶予の特例も利用できなかったために、農地を維持することが難しかったのですが、生産緑地の面積要件が緩和されることにより、次の世代に都市部近郊農地を残しやすくなりました。
都市部近郊に農地を所有されておられる方にとって、とても大きなニュースだと思います。
また、この法律成立によって、生産緑地地区内で農作物の直売所や農家レストラン等の設置も可能となります。
それ以外にも、新たな用途地域として「田園住居地域」を創設し、地域特性に応じた建築規制や農地開発規制を行なえるようになります。
生産緑地の
京都・大阪・奈良の生産緑地をお持ちの方は、まず危険度をチェック!相続対策への第一歩を踏み出してください。 |
特定生産緑地に指定する・
多くの生産緑地についてアドバイスしてきた、コンサルタント集団が、「特定生産緑地に指定する・指定しない」をシミュレーション診断いたします。 |