農地所有者だけの問題ではない2022年問題について
今回は、三大都市圏(東京・大阪・名古屋及びその周辺地域)に土地や収益マンションを所有しておられる方向けの内容です。
新聞・テレビ・雑誌・ネット等の各種メディアで今話題の2022年問題ですが、そもそも何が問題なのかについて見て行きましょう。
2022年問題とは何か
三大都市圏(東京・大阪・名古屋及びその周辺地域)の都市部農地のうち、平成4年4月の生産緑地法改正時に保全すべき農地にすることを選択し、30年間農業経営を継続することを条件に税制優遇を受けている農地を生産緑地といいます。生産緑地の1区画は500㎡以上あります。
その生産緑地が平成34年(2022年)4月に指定解除期限を迎えます。
生産緑地が解除されると宅地への転用や転用後の売却が可能となる為、一斉に都市部農地が宅地化されて売り土地が大量供給され、土地の価格が暴落したり、賃貸マンション建築ラッシュにより周辺の収益マンションの空室リスクが上昇し賃貸経営が悪化したり、買い替えや住み替えにより大量の空き家が新たに発生する等の問題を2022年問題と呼んでいます。
でもそんな説明では今一つピンと来ない方もおられる思います。
具体例で考えてみます。(数値は国土交通省の平成27年都市計画現況調査のデータから引用)
【京都府の場合】
京都市を始め全11都市に837.1ha(ヘクタール)の生産緑地があります。これは東京ドーム178個分の大きさです。
【大阪府の場合】
大阪市を始め全34都市に2068ha(ヘクタール)の生産緑地があり、東京ドーム440個分の大きさです。
京都府なら東京ドーム178個分、大阪府なら東京ドーム440個分の都市部農地が一斉に宅地化されることを想像してみてください。
広大な面積の都市部農地が一斉に宅地化されて市場に供給されると以下のような影響があります。
2022年問題の影響
一つ目の影響ですが、地価が下落又は暴落する可能性があります。
広い面積の都市部農地を宅地化した場合、高額な相続税の支払が発生するケースが多いですが、地価が下落すると相続税の支払が難しくなることが予想されますので、生産緑地を所有されておられる方は事前に都市部農地の相続に詳しい専門家に相談されることをお勧めしております。
地価の下落の影響は皆さんの所有している不動産にも及ぶ可能性があります。資産価値が低下すると住宅ローンが残っている場合、買い替えや売却をしたくても住宅ローンの残高が資産価値を上回って債務超過の状態になり、売却しにくくなってしまいます。
高齢になって自宅を売却して老人ホーム等の施設に入居しようと思っても思うような価格で売却できず、施設の入居が難しくなることも考えられます。
会社等を経営している方は、所有する資産の担保評価が下落しますので、追加担保を金融機関に要求されたり、新規融資が難しくなることも考えられます。
土地価格が下落すると経済にも悪影響が及び、デフレに逆戻りする心配まであります。
二つ目の影響は、賃貸経営の悪化の可能性です。デベロッパーが2022年問題をビジネスチャンスと捉えて賃貸マンションの建築営業に力を入れています。生産緑地所有者も30年間土地が有効活用できなかったので賃貸マンション等の建設意欲が高まっています。結果的に賃貸マンションの大量供給により、築年数の経過しているマンションの空室率が増加します。更に賃貸物件が過剰供給された場合、新築した賃貸マンションの経営自体も悪化する可能性があり、少子化の影響も受けて賃貸経営がうまくいかなくなる心配があります。
三つ目の影響は、空き家問題に拍車がかかる可能性があります。最新の空き家率調査によると平成25年時点で全国平均で13.5%が空き家となっています。少子化に伴う人口減少により今後ますます空き家が増加すると予想されていますが、新築一戸建て、新築分譲マンション、新築賃貸マンションの大量供給が起きると空き家率が更に上昇してしまいます。
老朽化して放置された空き家は、倒壊の危険性、虫や動物の住処になり衛生面の問題、放火犯に狙われやすい問題等を引き起こし、長い目でみると地域コミュニティを弱体化させてしまいます。
2022年問題は心配なことばかりですが、国も対策に取りかかり始めました。私たちがどのように対処していけば良いかについては次回のコラムでお伝えしたいと思います。
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