京都・大阪・奈良に多い、放っておくとトラブルになりやすい、生産緑地を相続する人のための、相続対策と準備のノウハウをまとめました。

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農地コンサルタントが見た、生産緑地の相続対策ブログ

2017/08/30

農地所有者だけの問題ではない2022年問題について

今回は、三大都市圏(東京・大阪・名古屋及びその周辺地域)に土地や収益マンションを所有しておられる方向けの内容です。

新聞・テレビ・雑誌・ネット等の各種メディアで今話題の2022年問題ですが、そもそも何が問題なのかについて見て行きましょう。


2022年問題とは何か

三大都市圏(東京・大阪・名古屋及びその周辺地域)の都市部農地のうち、平成4年4月の生産緑地法改正時に保全すべき農地にすることを選択し、30年間農業経営を継続することを条件に税制優遇を受けている農地を生産緑地といいます。生産緑地の1区画は500㎡以上あります。

その生産緑地が平成34年(2022年)4月に指定解除期限を迎えます。

生産緑地が解除されると宅地への転用や転用後の売却が可能となる為、一斉に都市部農地が宅地化されて売り土地が大量供給され、土地の価格が暴落したり、賃貸マンション建築ラッシュにより周辺の収益マンションの空室リスクが上昇し賃貸経営が悪化したり、買い替えや住み替えにより大量の空き家が新たに発生する等の問題を2022年問題と呼んでいます。

でもそんな説明では今一つピンと来ない方もおられる思います。

具体例で考えてみます。(数値は国土交通省の平成27年都市計画現況調査のデータから引用)

【京都府の場合】

京都市を始め全11都市に837.1ha(ヘクタール)の生産緑地があります。これは東京ドーム178個分の大きさです。

【大阪府の場合】

大阪市を始め全34都市に2068ha(ヘクタール)の生産緑地があり、東京ドーム440個分の大きさです。

京都府なら東京ドーム178個分、大阪府なら東京ドーム440個分の都市部農地が一斉に宅地化されることを想像してみてください。

広大な面積の都市部農地が一斉に宅地化されて市場に供給されると以下のような影響があります。


2022年問題の影響

一つ目の影響ですが、地価が下落又は暴落する可能性があります。

広い面積の都市部農地を宅地化した場合、高額な相続税の支払が発生するケースが多いですが、地価が下落すると相続税の支払が難しくなることが予想されますので、生産緑地を所有されておられる方は事前に都市部農地の相続に詳しい専門家に相談されることをお勧めしております。

地価の下落の影響は皆さんの所有している不動産にも及ぶ可能性があります。資産価値が低下すると住宅ローンが残っている場合、買い替えや売却をしたくても住宅ローンの残高が資産価値を上回って債務超過の状態になり、売却しにくくなってしまいます。

高齢になって自宅を売却して老人ホーム等の施設に入居しようと思っても思うような価格で売却できず、施設の入居が難しくなることも考えられます。

会社等を経営している方は、所有する資産の担保評価が下落しますので、追加担保を金融機関に要求されたり、新規融資が難しくなることも考えられます。

土地価格が下落すると経済にも悪影響が及び、デフレに逆戻りする心配まであります。

二つ目の影響は、賃貸経営の悪化の可能性です。デベロッパーが2022年問題をビジネスチャンスと捉えて賃貸マンションの建築営業に力を入れています。生産緑地所有者も30年間土地が有効活用できなかったので賃貸マンション等の建設意欲が高まっています。結果的に賃貸マンションの大量供給により、築年数の経過しているマンションの空室率が増加します。更に賃貸物件が過剰供給された場合、新築した賃貸マンションの経営自体も悪化する可能性があり、少子化の影響も受けて賃貸経営がうまくいかなくなる心配があります。

三つ目の影響は、空き家問題に拍車がかかる可能性があります。最新の空き家率調査によると平成25年時点で全国平均で13.5%が空き家となっています。少子化に伴う人口減少により今後ますます空き家が増加すると予想されていますが、新築一戸建て、新築分譲マンション、新築賃貸マンションの大量供給が起きると空き家率が更に上昇してしまいます。

老朽化して放置された空き家は、倒壊の危険性、虫や動物の住処になり衛生面の問題、放火犯に狙われやすい問題等を引き起こし、長い目でみると地域コミュニティを弱体化させてしまいます。

2022年問題は心配なことばかりですが、国も対策に取りかかり始めました。私たちがどのように対処していけば良いかについては次回のコラムでお伝えしたいと思います。


2017/08/23

そもそも生産緑地とは

今回は、都市部の農地を所有しておられる方向けの内容です。

都市部(市街化区域内)の農地の内、所轄の自治体から生産緑地地区の指定を受けている農地を「生産緑地」と言います。

生産緑地とそれ以外の農地では見た目ではどちらも都市部にある農地で違いはありません。

生産緑地は、良く良く見ると「生産緑地地区」という杭や看板が設置されています。

その他の都市農地との主な違いは、生産緑地が農地以外に転用しないことを条件に税制優遇を受けていることでしょう。

平成3年の税法改正により、都市部農地は保全すべき農地と宅地化すべき農地に区分することになりました。

税法改正と同時期に生産緑地法も改正され、平成4年4月に改正生産緑地法が施行されました。

上記の農地の区分をきっかけに営農を継続することを選択した保全すべき農地は、平成4年4月に一斉に生産緑地地区の指定を受けました。

平成4年当時、都市部農地の約3分の1が生産緑地地区の指定を受けています。

残りの約3分の2の都市部農地は、近い将来に宅地に転用するとか売却する予定がある為に指定を受けませんでした。

それでは、生産緑地の指定を受けるにはどのような要件があるのかを見て行きましょう。

生産緑地の指定を受ける場合の主な要件

  • 農林業などの生産活動が営まれていること
  • 面積が 500㎡以上であること(森林、水路・池沼等が含まれてもよい)※平成29年の生産緑地法改正により、面積要件が緩和されて300㎡以上になりました。
  • 農林業の継続が可能であること(日照等の条件や農業用水路が利用可能等、営農に適していること)
  • 当該農地の所有者その他の関係権利者全員が同意していること。

続いて生産緑地地区指定を受けている農地である「生産緑地」のメリットとデメリットについても見て行きましょう。

 

生産緑地のメリット

  • 固定資産税が農地並み課税となる(課税額が非常に低く、1,000㎡あたり数千円程度)
  • 相続税の納税猶予の特例が利用可能となり、相続税を心配せずに都市部の農地を次世代に遺せる

 

生産緑地のデメリット

  • 生産緑地指定日から30年間営農義務がある。但し農地所有者死亡の場合は30年以内でも生産緑地の指定を解除可能
  • 農地以外には使用できないので、指定から30年間は売却・宅地への転用・賃貸・建築いずれも不可
  • ほとんどの生産緑地が平成34年(2022年)4月で解除期限を迎える為、一斉に都市部農地が宅地化されて宅地価格が暴落したり、賃貸マンション建築ラッシュにより空室リスクが上昇し賃貸経営が悪化するという問題(いわゆる2022年問題)がある
  • 金融機関が担保価値を評価できない為、生産緑地を担保に入れて融資を受けることができない
  • 生産緑地の指定を解除する手続きは買取申出という制度を利用する為に時間がかかる

生産緑地は確かにメリットも大きいですが、反面デメリットも大きいのが良く分かりますね。
メリットに上げた生産緑地の相続についてですが、納税猶予の特例を利用すると相続税はほとんどかかりません。しかし、農地を相続した人が死亡するまで営農する義務が生じます。

その為、生産緑地の相続は、節税だけでは無く、相続される方の人生設計を十分に考えて対策を立てる必要がありますので、時間の余裕を持って生産緑地の相続対策に精通した専門家に相談されることをお勧めしております。

 

京都・滋賀・大阪の生産緑地の相続対策のご相談は、農地相続コンサルタントの小林までお気軽にご相談ください!

 

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2017/08/02

耕作放棄の原因とは

今回は、農地を所有されておられる方や農地にかかる相続税について納税猶予の特例を利用されている方向けの内容です。

耕作放棄の結果、荒廃農地が増えてきています。平成28年4月に農林水産省が発表した調査結果を基に見て行きましょう。

全国の農地面積は、最大であった昭和36年には608.6万ha(1haは10,000㎡)ありましたが、平成27年には449.6万haと約159万ha減少しました。

平成27年の農地面積の減少要因の主なものは、耕作放棄(荒廃農地)が52%、農業以外の用途への転用が39%となっています。

農地面積の減少は食料需給率の面で心配ですが、減少の最大の原因が耕作放棄による荒廃農地というのも問題ですね。

下の図をご覧ください。耕作放棄による荒廃農地の主な発生原因は、都市部では「高齢化、労働力不足」が25%で最も多く、次いで「土地持ち非農家の増加」が18%です。

土地持ち非農家とは聞きなれない単語ですが、農家以外で耕地及び耕作放棄地を500㎡以上所有している世帯のことです。そのほとんどが相続で農地を取得したが農業には従事ぜず、耕作放棄している世帯だと思われます。

荒廃農地をこれ以上増やさない為、農地を相続される予定の方には、将来農地をどう耕作していくか、若しくは転用して有効活用するか、前以て良くご検討して頂きたいですね。

 

 (出典:農林水産省農村振興局)


荒廃農地と納税猶予の特例の関係について

私がなぜ荒廃農地に注目しているかと言いますと、農地にかかる相続税の「納税猶予の特例」と関係しているからです。

特に都市部の農地で納税猶予の特例を受けている方が耕作放棄してしまうと大変なことになってしまいますので、十分ご注意頂きたいですね。

三大都市圏【東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)】のケースについて考えてみます。

納税猶予の特例とは、終身営農(亡くなるまで農業経営を継続すること)を条件に農地にかかる相続税の支払いを猶予し、農地を相続した人が亡くなった段階で農地にかかる相続税を免除する。という税制の特例のことです。

納税猶予の特例を利用している方は、3年ごとに税務署に継続届出書を提出する義務があり、「農業経営を引き続き行っている旨の農業委員会の証明書」を添付する必要があります。これには必ず農業委員会が現地調査を実施し、耕作状況等の確認をしますので、その際に耕作放棄(荒廃農地)と見なされてしまうと納税猶予が打ち切られてしまいます。打ち切られた結果、猶予された相続税と相続開始から納税猶予打ち切りまでの期間の利子税の合計を打ち切りから2か月以内に一括納税しなければならなくなります。特に都市部の農地の場合には高額な納税が必要となります。

納税猶予の特例を受けておられる方は、耕作放棄して荒廃農地とならないように十分気を付けて頂きたいですね。

 


2017/07/26

相続後の賃料収入を誰が受け取るべきか

 

今回は、収益不動産を所有されておられる方向けの内容です。

相続財産の中に収益不動産(賃貸マンション・テナントビル・駐車場・貸家・貸土地等)がある場合、被相続人(相続される人)の死亡後も当然賃料収入が発生します。

相続開始後から遺産分割が完了するまでの間の賃料は、被相続人死亡後に発生したものですので遺産には含まれません。

では、賃料収入は誰が受け取るべきなのでしょうか?

遺言書があり、収益物件の遺産分割について記載がある場合と遺言書が無い場合のケースに分けて見て行きましょう。

 

遺言書ありのケース

遺言書に記載された遺産分割方法に従って賃料受取人が決定します。

例えば、遺言書に「賃貸マンションAは長男が、賃貸マンションBは次男が相続する。」と記載されていて遺言書が有効なものである場合、賃料収入の受取人は、賃貸マンションA=長男、賃貸マンションB=次男となります。

 

遺言書なしのケース

賃料の受取人が誰なのか問題になるのはこちらのケースです。

遺言書が無い場合には、相続人全員の遺産分割協議により遺産を相続する人を決定します。

平成17年9月8日の最高裁判決によると、相続開始から遺産分割完了までの間の賃料は、共同相続人の相続分(民法で定められた法定相続分割合)で取得する。とされています。

 

例えば、相続人が3人(母・長男・次男)で、賃貸マンションA(賃料月額50万円)、賃貸マンションB(賃料月額30万円)の場合、賃料収入は以下のように受け取ります。

(賃料の受取方法)

相続開始が1月1日、遺産分割完了が同年の7月1日の場合、賃料月額80万円×6か月=480万円を分配します。

母 :480万円×相続分2分の1=240万円

長男:480万円×相続分4分の1=120万円

次男:480万円×相続分4分の1=120万円

 

もう一つ問題なのが、法定相続分割合とは異なる内容で遺産分割された場合です。

例えば、上記のケースで考えますと、遺産分割協議では母が賃貸マンションA・B共に取得することになった場合、長男と次男は受取済みの賃料120万円ずつを母に返さないといけないのでしょうか?

そんな場合でも、遺産分割の結果が相続開始後から遺産分割が完了するまでの間の賃料には遡及しないという最高裁の判例がありますので、賃料120万円を母に返す必要はありません。

 

相続開始後の賃料を誰が受け取るかについてはご説明の通りですが、相続人間のトラブルを避ける為に、特に収益物件を所有しておられる方には、前もって遺言書を作成されることをお勧めしております。


2017/07/19

農林水産省発表の最新統計データに注目

農林水産省が6月30日に平成29年の農業構造動態調査結果を発表しました。

この調査結果の中でも農業経営者の高齢化を表す統計データに注目してみました。

仕事として自営農業に主として従事した人の数は、150万7,100人で、前年比7万9,000人(5.0%)減少しています。

年齢階層別に見ると、65〜69歳の階層以外の全てが減少しています。

65〜69歳の階層は、37万2,700人で前年比5万3,800人(16.9%)増加しています。

 

(出典 農林水産省平成29年農業構造動態調査結果)

 

上記の統計表より、年齢階層別の構成比で見ると、49歳以下10.5%、50〜59歳10.5%、60〜64歳12.6%、65〜69歳24.7%、70〜74歳13.9%、75歳以上27.7%となっています。

労働力の中心である65歳未満を合計しても33.6%と全農業経営者の3分の1にしかなりません。

農業経営者のうち65歳以上が実に3分の2を占めていますので、高齢化の進行はかなり深刻ですね。

近い将来、体力の衰えによる引退や相続により農業経営を次の世代に承継される農家の数は益々増加していきます。

同時に、次の世代が農業経営を継がない農家の数も相当増えることでしょう。

 

特に都市部近郊の農家におかれましては、生産緑地解除の問題(いわゆる2022年問題)をどう乗り越えるのか?農業経営の事業承継をどうするのか?前もって良くご検討して頂き、最善の選択をして頂きたいと願っております。

2022年問題にどう取り組むべきか。農業経営を事業承継するべきか、しないべきか。明確な答えを出せず悩んでおられる場合には、農地相続コンサルタントの私 小林まで何なりとお気軽にご相談ください。


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