生産緑地に指定されてから30年が経過する農地は、特定生産緑地に指定することができます。
ここで注意しなければならないことは、市町村ごとに30年経過の始期が異なることです。
京都市では、平成4年(1992年)12月2日に指定された生産緑地が全体の約9割あります。※市町村により指定時期が異なります。
ということは30年後の2022年12月1日が30年経過日となります。
では、2022年12月1日が特定生産緑地の申請期限なのでしょうか?
実は、そうではありません。
法制度としてはその期日が正しいのですが、市町村ごとに特定生産緑地指定の申請期限を独自に決めています。
京都市の場合、令和4年(2022年)3月末が特定生産緑地の申請期限となっています。
※市町村により申請期限が異なります。
そもそも生産緑地や特定生産緑地の制度自体が分かりにくいですね。
申請期限についても30年経過よりも前の期日に設定されていますので、間違えないように注意してください。
もし、特定生産緑地の申請期限を過ぎてしまった場合はどうなるのでしょうか?
その場合、二度と特定生産緑地の指定を受けることができません。
※うっかり忘れていた等、理由の如何を問わず救済措置はありません。
特定生産緑地の指定を受けられないと、固定資産税優遇が無くなり宅地並み課税となります。
更に、次回の相続では納税猶予の特例の利用もできなくなります。
ただし、現在適用されている納税猶予の特例は、今回の分に限り適用が継続できます。
特定生産緑地指定の申請を考えておられる方は、申請期限に間に合うように早めに準備しておきましょう。
特定生産緑地制度ができた理由は、平成4年から始まった現在の生産緑地制度の趣旨から読み解くことができます。
現在の生産緑地制度の導入は、昭和60年代以降の不動産バブルにより、都市部の地価が高騰し、住宅の購入が難しくなってきたことがきっかけでした。
何とか土地の供給量を増やし、地価の上昇を抑制したい政府は、都市部にある大量の農地に目を付けました。
三大都市圏(大阪・東京・名古屋周辺の主な都市)の市街化区域(建物建築可能な区域)にある農地の所有者は、平成4年中(1992年)に生産緑地に指定して30年間農業を継続するか?それとも、指定せず、いずれは宅地化するか?のどちらかを選択することを迫られました。
その結果、大量の都市部農地の一部は宅地化されていきました。
平成4年(1992年)に指定された生産緑地は、30年後の令和4年(2022年)の期間満了により、いつでも宅地化できることになります。
そうすると大量の土地が不動産市場に流通し、地価の下落や賃貸市場の停滞などの悪影響を与えることが予想されます。
平成4年時点では、人口は増加し、地価は上昇していました。
現在はというと、人口は減少に転じており、少子高齢化が進んで住宅需要が沈静化しています。
そして空き家が増加して社会的な問題となっています。
そんな中で、都市部に大量の土地供給が行われると良くないことは誰にでも分かります。
そこで、生産緑地の維持(宅地化されないこと)を目的に特定生産緑地制度ができました。
生産緑地の宅地化を防ぐと共に、災害時の避難場所や景観の維持という面も期待されています。
生産緑地緑地の指定の日から30年経過した農地は、所有者が希望すれば特定生産緑地に指定することができます。
生産緑地と特定生産緑地は、制度のメリットとデメリットはほとんど同じですが、制度導入の目的が180度違うというところが興味深いですね。
生産緑地所有者はもちろん関係者です。
実は、他にも関係者がいます。
特定生産緑地の指定を申請する場合、上記の①〜⑤の登記等が設定されていれば、権利者全員の同意を得る必要があります。
権利者との関係性にもよりますが、権利者に相続が発生しており連絡先な不明な場合など、同意を得ることが困難なケースもあります。
権利者がおられる場合、早めに連絡を取ってご相談されることをお勧めします。
京都市では、上記⑤の納税猶予と農協の抵当権については、京都市が一括して手続きをしてくれますので、同意を取り付ける必要はありません。※京都市以外の市町村は手続き方法が異なります。
また、生産緑地の所有者が死亡されていて未登記の場合は、相続権のある方全員の同意が必要です。
相続人の意見がまとまらない・連絡が取れない・認知症で意思能力が無い等のケースでは、全員の同意を得るのに時間がかかりますので注意が必要です。
このような問題を避けるために、遺言書の作成をお勧めします。
所有者が元気なうちに、生産緑地の相続人を決めて遺言書を作成しておきましょう。
生産緑地の指定から30年経過すると固定資産税の優遇措置(農地並み課税)がなくなり、都市部農地の維持が難しくなる問題に対処するため、2018年4月から生産緑地法に新しい制度が追加されました。
それが、特定生産緑地制度です。
特定生産緑地制度とは、生産緑地のメリット・デメリットが、そのまま10年間延長できる制度のことです。
特定生産緑地制度の創設により、2022年に生産緑地が一斉に宅地化され、地価の下落や賃貸市場の崩壊が起こると問題視されていた、「生産緑地の2022年問題」の悪影響をかなり抑えることができそうです。
【生産緑地のメリット】
【生産緑地のデメリット】
2022年で30年の期間経過を迎える生産緑地について、期間満了までに、市区町村に特定生産緑地の申請をすることができます。
申請すると、従来の生産緑地と同じ税制優遇(固定資産税農地並み課税・納税猶予の特例利用可能)が10年間延長されます。
それと同時に10年間の営農義務も延長されます。
この制度ができたことにより、生産緑地を所有している方全員が、2022年の期間満了までに、特定生産緑地指定の申請をするのか?申請しないのか?を必ず選択しなければなりません。
もし、申請を忘れたまま期間満了(指定の日から30年経過)してしまうと、二度と特定生産緑地の指定を受けることができません。
その場合、固定資産税優遇が無くなり宅地並み課税となり、更に、次回の相続では納税猶予の特例の利用もできなくなります。
特定生産緑地指定の申請をするかどうか?という問題は、将来、農業を続けていく後継者がいるかどうか?という問題とも関係しています。
申請前に家族会議をして、次の世代に生産緑地をどう継承していくべきか。ご家族で良く話し合った上で、方向性を決めていくことをお勧めします。
生産緑地の一部だけを特定生産緑地に指定する場合、原則、土地の分筆(境界を確定してから土地を分割すること)が必要です。※市町村により対応が異なります。
土地の分筆手続きは、3か月〜長くて1年程度かかりますので、早めに手続きしないと申請期限に間に合いません。
早め早めの準備がとても大事です。
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